前立せんがんの新薬、エンザルタミド、アビラテロン、カバジタキセル

前立せんは男性だけが持つ臓器で、膀胱の真下にあり、栗の実のような形状。
排尿をスムーズにしたり、精液の流れを調節したりするのが役割で精液の一部である前立せん液を作る。

がん対策情報センターによると人口10万人当たりの前立せんがんによる死亡数は、昭和63年には20人だったが、平成24年には40人を超えた。
「がん統計白書」によると、6年後の患者数は約10万人で、男性癌の患者数第1位になると予想されている。

前立せんがんは50才以降に急増し、病理解剖のデータからすると、高齢男性の60%以上に潜在的ながんがあると推察されている。
進行の速さは悪性度や年齢によって異なり、何十年も進行しない人もいれば、1年程度で急激に悪くなる人もいる。

前立せんがんの治療法

治療法としては手術、放射線治療のほか、男性ホルモンを遮断する薬物療法(ホルモン療法)も広く行われている。
根治はされないが、前立せんがんは精巣から分泌される男性ホルモンにより進行することから、薬物による去勢状態を作り出すことで、進行を抑えられるからだ。

薬物に抵抗性

しかし、長年ホルモン療法を続けていると、やがて大部分の患者は精巣から男性ホルモンを作り出さないのにもかかわらず、がんが進行する状態「去勢抵抗性前立せんがん(CRPC)」に移行するとされる。

たとえば、65歳でホルモン療法を始め、3~5年で進行を抑えたあと、CRPCになったとする。
すると、自覚症状がない場合でも平均余命は約2年、症状がなく転移がある場合は1年~1年半、痛みがある症状がある場合は約1年しかないという。

近年の研究で副腎と前立せんがんそのものが男性ホルモンを生成し、腫瘍を大きくすることがわかり、より完全に男性ホルモンの生成を抑える新薬の開発が進展。
日本では今年5月にアステラス製薬が、「イクスタンジカプセル」一般名エンザルタミドを発売。
アストラゼネカとヤンセンファーマも「ザイティカ」同・アビラテロンを今月2日発売した。

治療に選択肢

これまでホルモン療法が効かなくなった患者に対しては、たった1種の抗がん剤(ドセタキセル)を使うしかない状況が長年つづいていた。
今回発売された新しいホルモン剤2種類が、CRPCの第一選択肢になると話す。

その他、サノフィも新たな抗がん剤、ジェブタナ(同・カバジタキセル)の販売を開始、従来の抗がん剤よりも末梢神経への影響が少ない。
たとえ70歳以上でCRPCになっても、新薬を適切に使うことで、平均寿命までより良い生活を目指す治療の選択肢が増えた。

エンザルタミド

男性ホルモン受容体阻害薬。
商品名:イクスタンジカプセルなど
前立腺がん細胞にある受容体と男性ホルモンがくっつかないようにする作用がある。
男性ホルモンが癌細胞の内部に届かなくなり、がんの増殖を抑える。
1日1回160mgを経口投与する。
主な副作用は疲労、背部痛、便秘、関節痛、一部にけいれん発作も。

アビラテロン

男性ホルモン生成酵素阻害薬。
商品名:ザイティガ錠など
精巣、副腎、前立腺がんで男性ホルモンの生成に関わる酵素が働かないようにし、男性ホルモンの生成を抑える。
1日1回空腹時に1000mgをステロイド剤(プレドニゾロン)と併用して経口投与する。
主な副作用は疲労、背部痛、関節痛など。

カバジタキセル

商品名:ジェブタナ
癌細胞内のたんぱく質にくっついて細胞分裂を防ぎ、癌の増殖を抑える抗がん剤。
臨床試験で抗がん剤「ドセタキセル」投与後に使用し、死亡リスクを3割減らせるなどの効果を示した。
抗がん剤。ステロイド剤と併用し、1日1回1時間かけて3週間おきに点滴静注する。
重い副作用として白血球減少がある。

前立せんがんの発見と避妊薬?

前立せんがんは、血液検査PSA、前立せんエコーで発見できる。
考えてみれば、女性ならピルのように、男性向け避妊薬として、ホルモン薬は使えるということですよねと思います。
男性の避妊なんて、少々体に害があっても構わないんですから。