遺伝子検査で癌の治療薬が見つかる可能性ALKならザーコリ

遺伝子検査で個別化医療のご紹介。
薬が効かなくなるたび次の薬はあるのかと一喜一憂してきた。
肺がんを患い7年半になる70歳女性。
大阪府立成人病センターで治療を受け、これまでに使った抗がん剤は11種類に上る。
2006年9月、日本人の約6割を占める、腺がんと診断された。
他の臓器への転移はなく、標準的な抗がん剤と放射線治療で癌は消えた。
だが、翌年右肺を覆う胸膜に散らばる形で再発。
その後は血液検査で腫瘍マーカーの数値が上がるたび、従来型の抗がん剤などで抑えてきた。

癌を遺伝子検査で薬が効く患者を見つけることができる個別医療

昨年1月、腰に酷い痛みが出て、食欲不振に陥った。
検査の結果、背骨に転移した癌が脊髄に迫っていた。
症状が進めば歩けなくなる恐れもある。
主治医で呼吸器内科主任部長の今村先生は肺に細い針を刺して、胸水を採取し、がん細胞遺伝子を調べる検査を実施、癌増殖にかかわる「ALK」遺伝子に以上が見つかった。
ALK遺伝子には腺がんの約4%を占め、市昨年に登場した分子標的薬「ザーコリ(一般名クリゾチニブ)」が有効だ。
ALK=未分化リンパ腫キナーゼ=癌発生遺伝子の一つ。

ザーコリが効くことが判明した

ザーコリを服用して10日ほどで痛みは治まり、旅行ができるまでに回復。
吐き気や下痢の副作用はあるが、薬で対処できている。
「一時は夏を越せないかもと思っていた。薬の効き目に感謝し、孫達の成長を励みに頑張っていきます」と話す。

近年癌細胞の遺伝子情報に基づいて薬を選ぶ「個別化医療」の進歩が目覚ましい。中でも肺ガンは癌の増殖を促す遺伝子が次々と見つかっている。

ALKの検査は一部実費だが、製薬会社の検査費補助制度もある

課題もある。ALKの有無を調べる検査は3つあるが、保険が認められているのは一つ。
気管支鏡を使い、一定量の組織採取が必要で患者に負担をかける。
病巣が灰の奧にある患者は全身状態が悪い患者には検査できない場合もある。

一方取り上げた患者が受けた、針を刺して供水を取る検査方法は患者の負担は小さいが保険が効かない。
①発見頻度が低い
②結果判明まで患者を待たせられない
などの理由で積極的に行わない病院もある。

大阪府立成人病センターではザーコリの承認に合わせ、三つの検査を行える体制を整備。
検査費の一部を病院で負担し、服用者の半数を胸水を取る方法で見つけてきた。
現在は販売元の製薬会社の検査費補助制度もある。

こうした検査について専門医は保険適用範囲の拡大を求めており、切実に薬を求める患者に応えられるよう、病状に応じた柔軟な運用ができるようにすべきだと話す。