40歳女性、左乳癌で温存手術を受けました。
ステージⅡで腫瘍の大きさは1.5センチ、リンパ管浸潤は要請、血管浸潤は陰性でした。
核異型度はグレードⅡでホルモン受容体はER(エストロゲン受容体),PgR(プロゲステロン受容体)ともに陽性、
Ki-67は7%でルミナールA型です。
センチネルリンパ節生検でリンパ節を1個採取しました。
質問
術中検査は陰性でしたが、後の病理検査の永久標本で、1.8ミリの微小転移が見つかりました。
全身に広がっている可能性を考え、抗がん剤のFECを4クール行いました。
リンパ節は、追加してさらに取る必要はないと言われました。
現在放射線治療を行い、その後ホルモン治療をする予定です。
本当にリンパ節郭清(りんぱせつかくせい)は追加しなくていいのでしょうか?
回答
リンパ節の中のがんの量を区別する為、転移の大きさが2ミリ以内を微小転移、
2ミリ以上をマクロ転移と分けています。
今までは転移があれば残りのリンパ節を全て取っていました。
現在は微小転移について、センチネルリンパ節への転移の可能性は少なく、
郭清を省略してもいいのではないかという意見があります。
郭清をしてもしなくても同じ成績だったという報告もあります。
リンパ節を郭清することは、リンパ浮腫などの不利益を伴うので、微小転移だったら
郭清をするよりも全身的な薬物療法をするほうが大きな意味があるという考え方です。
微小転移ですし、全身の治療もしっかりしているので、
追加郭清は必要ないと思います。
今はもう少し前進して1個2個のマクロ転移があっても条件が整えば省略してはどうかという意見もあり、
リンパ節手術の流れは郭清省略の方向へと向いているようです。
Ki-67
Ki-67値とは癌の進行スピードを知る指標、細胞増殖能のマーカー。
Ki67高発現(10%以上と定義)は予後不良との報。
ルミナールA型
乳がんの再発後の薬物治療は、「ルミナール型」「トリプルネガティブ型」「ルミナールHER2型」「HER2型」です。
「ルミナール型」は、ホルモン剤と抗がん剤を組み合わせた治療をします。
ホルモン感受性があるタイプはluminal といわれてA.Bの2タイプあります。
luminal AとBの違いは ki67が高いか低いかで、基準は14%とのことです。
センチネルリンパ節生検
乳癌は乳腺の中のリンパの流れにのってリンパ節に転移します。
乳腺から流出したリンパ液が一番最初に入り込むリンパ節をセンチネルリンパ節といいます。
このリンパ節にもし癌が転移していなければ、それより遠いリンパ節には転移はあり得ないことになります。
リンパ節郭清(りんぱせつかくせい)
リンパ節(腋窩リンパ節)を外科的に切除すること。
リンパ節に転移しているがんを除去し、抗がん剤治療などの補助療法を決定するための情報を得ることが目的。