卵巣がんI期であれば抗癌剤を省略

65歳の女性です。
健康診断で卵巣の腫れが見つかりMRIとCTで4.7センチのブレンナー良性腫瘍と診断され2ヶ月前に両卵巣と子宮の摘出手術を施行。
術後病理検査の結果、卵巣がん高異型度漿液性腺癌と診断されました。
主治医から再手術の上、抗癌剤治療をするべきと勧められています。
手術すべきですか?

初回手術で卵巣がんと判明、再手術するべきか?

卵巣がんの治療は1985年以降大掛かりな手術(腹腔内全体をよく見て胃と横行結腸を覆う大網膜を切除、骨盤や傍大動脈リンパ節を郭清する)を行い様になりました。
その結果、手術時にI期と思われても腹膜播種や大網・リンパ節転移などを認められる患者さんが25%くらいいて、進行期がⅢ期に上がることがわかりました。
また手術と抗癌剤の進歩によりⅢ期の五年生存率は85年以前の10%未満から、細菌は40%くらいに改善しI期も90%くらいになっています。

今回手術時の所見ではがんが卵巣内に限局している推定I期ですが、再手術で腹腔全体をよくみれば、約25%の方はⅢ期になるかもしれません。
逆に75%は転移がないことが確認され厳密な意味でI期となります。
I期であれば抗癌剤を省略できる場合も多く患者さんの利益になります。

運悪く転移が見つかりⅢ期になると

覚悟を決めて頂き抗癌剤のTC療法(パクリタキセル+カルボプラチン)を6~8サイクル行います。
最近はⅢ期がん化学療法には分子標的薬ベバシズマブ(血管内皮細胞の増殖を阻害するもの)も併用し50%以上の5年生存率を目指します。

あなたは65歳なので手術に耐えられないような思い内科的合併症がなければ手術を受けることを勧めます。
もしどうしても手術を受けたくないという場合は少なくとも抗癌剤治療を6サイクル以上受けて下さい。

平成29年8月15日産経新聞生活欄癌電話相談より。