急性腹症で救急車の原因は流行性筋痛症だった

公開日: : 総合内科

創業100年を超える温泉旅館の女将44歳。
初めはおなかの違和感。
次第に我慢できない痛みに。
声を出すこともできない痛み。
とうとう動くことも出来なくなった。
救急車で病院へ。ドクターGでは異例。

患者の状態・ストーリー

朝8時に出社。研修医から相談。
とにかくお腹が痛い。
救急車で深夜3時ごろ他の病院でCTを取ったが異常がないからと返された。
それからうちにきた。

経過観察で入院してもらった。
痛み止めが効いたのか落ち着いている。

患者は座っている。
横になろうとすると痛い。座ってたら楽。
150cm65キロぽっちゃり体系。

4日前夜にはじめてお腹の痛み。
夕食の時からお腹に違和感。
風邪の症状もあった?
たいしたことがない熱っぽかった。
5年ほど前から胸焼けを起こすようになった。
近所の病院で逆流性食道炎と言われた。
薬飲んだら1時間ほどで痛みが治まった。

逆流性食道炎の原因はストレスだといわれました。
ストレスは子供に恵まれなかったことかな。
15年前に老舗旅館の息子に嫁いだ。今客がまばら。
責任感がある。旅館の経営が四六時中頭から離れない。気が休まらない。
ストレスからか、毎晩、お酒で缶ビール1本飲み、ここ最近、体重が増えた。
一番ストレスなのは10日前お姑(大女将)ちょくちょく様子を見に来てはいろいろ言いに来る。
(お姑は、ひどい腰痛で私に女将を譲った。)
常連客の息子にかっこ悪いところを見られた。

手を動かしたら痛い

4日前、その後どのような変化がありましたか?
次の日は久しぶりに団体の客で無理をして仕事をした。
痛みは少しずつひどくなって、最初はお腹の奥のほうが痛かったんです。
次第にお腹の右上のほうも痛くなりました。
なんとか我慢していたんですが、近所のクリニックに行ったところ、腸の動きが少し変だといわれた。
腸の痙攣を抑える薬をもらいました。
お腹の痛みが治まらず、とうとう仕事を休んでしまった。
その時背中の方にもも痛みを感じるようになった。

お腹の痛みは、差し込むような痛み、今まで生きてきた中で一番大きい痛みで、救急車で病院へ行った。
CTで異常がないと言われて家に帰された。

患者のバイタル情報

その時のレントゲン、心電図に異常はなかった。
検査結果
体温37.4
血圧127・81
脈拍76回分
呼吸16回分

研修医の初回診断

急性膵炎3

アルコールの多飲や胆石、膵液の炎症。
上腹部が痛む。軽度から激痛まで。吐き気や発熱。
心窩部の痛み、食事中に発症。
食事はとんかつ。脂っぽいものは胆嚢が収縮して胆石が落下してすい胆道につまる可能性も有る。
合わない理由:左か背部なので違うかな?痛みの場所が合わない。

大動脈乖離1

動脈に膜が3枚。内側の膜が裂け、全身の血流が阻害。
肥満、ストレス。
合わない理由:CTで異常がなかった。

フィッツ・ヒュー・カーティス症候群

骨盤内、肝臓周囲、膜に炎症。
腹部から右上腹部。
合わない理由:肝周囲の炎症の像がCT所見がない。

重篤な病気を示唆する3つのアラームサイン

激しい腹痛から考えられる病名。
その症状から見逃してはいけない危険信号。

1.人生最大の痛み

客観的に数字で表すと10段階の10分の10。

2.増悪する痛み

痛みが酷くなって。

3.拡大する痛み

広範囲に最初の場所より広がっている、拡大する痛み。

3つもあるわけは「急性腹症」というキーワード

病名ではなく 急激な腹痛を主訴とする疾患群の総称。
緊急手術が必要かどうか迅速に判断しなければならない。

急性腹症、緊急手術が必要か迅速に判断する段階

1.数分以内に手術が必要

腹部大動脈瘤破裂。動脈硬化が原因でこぶが破裂し、大量出血する。
臓器損傷。外傷が原因。

2.数時間以内に手術

絞扼性イレウス。腸閉塞の一種、腸間膜の血管がねじれしめつけられる。
子宮外妊娠。
卵巣茎捻転。

3.様子を見て必要に応じて手術(数日)

絞扼性以外のイレウス。
急性膵炎。(保存できる)

4.お腹の中以外に原因

アレルギー性紫斑病。皮膚関節、消化器、血管炎症、紫斑や関節痛。食物薬物アレルギーが原因。
心筋梗塞。心臓の病気。場所が近い。

5.これらが全部ありえない経過観察でつける病名

非特異的腹痛。

他の救急病院でCTをとったそうですが異常がないと帰宅させられた。

熱っぽかったのはいつごろ?

お腹の痛みがでる少し前でした。
7日前、その日は朝から喉が痛かった。
頭痛とだるさ。風邪の引き始めかな?
せきや鼻水の症状はない。
風邪は栄養ドリンクと気合で治すんです。仕事休めない。

仕事場で風邪を引いていた人は?
常連客の5歳の子供が到着して早々熱を出した。
赤ちゃんの頃からの常連客。すぐによくなった。海に遊びに行った。
3日前、お腹が痛くなってから前かがみの姿勢が多くなった。

胃カメラ:ストレス胃潰瘍なし
血液検査:異常なし

詐病(さびょう)や仮病(けびょう)というのもあるしね。
番組始まって以来の難問。

研修医の2回目の診断

結節性多発動脈炎

腎臓や血管に炎症が波及。中・小動脈に炎症が起きる。
全身性疾患で40歳以上に多い。
腹膜の中で炎症はないが非典型的だが・・・
フィッツヒューカーティス症候群、ともに血液検査で炎症がでるはず。

見逃しているシーンはないのだろうか?

どういう病歴があったのか?
微熱、咽頭痛、頭痛とだるさ、腹痛の3日前。
溶連菌感染、ウイルス性感染症。
小さい子供が熱を出していた。
ウイルス感染症が一つのポイント。
ウイルスに感染して咽頭痛を発症したと考えられる。

レントゲン撮影の写真の背骨が曲がっていた

もう一つは、前医の話をダイレクトに鵜呑みに出来ない。
ダブルチェックする。もう一度見直す。
単純X線写真、全体像を見る。
局所を見ると見えないものが見えてくる。
背骨が曲がっている。背骨が側湾(そくわん)している。
(急性腰痛症、ぎっくり腰や便秘かなと思ったがw)
仰向け、仰臥位(きょうがい)で撮影したものだが、まっすぐ寝れず脊椎が曲がっていた。
なぜ真っ直ぐ寝れなかったのか?

痛くて右の筋肉をゆるめていた?
痛みの原因は体表、筋肉?(体表だと帯状疱疹?)
右手を上げた時に痛かった、横に寝れなかった、楽な姿勢は座位だった。

飲みものを受け取れない。
痛みの原因は筋肉にあったと考えられる。
ウイルス性筋痛症。

答えは流行性筋痛症

筋肉に感染する。痛みが10分の10になりうるのが特徴。
胸部、腹痛、背部に多い。

子供の夏風の原因である、コクサッキーB群ウイルスに感染し、体幹の筋肉に痛みが生じる。
カーネット徴候は陽性。
お腹の圧痛があった。

筋肉に痛みがあるため背筋を伸ばせなかった。
過去に日本で流行したことがある。
まれに髄膜炎など起こすがたいてい自然に治る。
痛みに対する不安もなくなった。
この病気は診断が難しい。

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