人工股関節手術後の脱臼が大幅に減少した病院

股関節や膝の関節の痛みは加齢などが原因で、関節を構成する脚の骨と受け皿の骨との間を埋める軟骨が減るなどして直接にこすれる形になって生じる。
ひどい痛みや歩行障害がある重症の場合、外科手術で特殊な合金やセラミックスでできた人工関節に置き換える。
しかし挿入の角度が数度、位置が数ミリずれるだけで装着している間に脱臼したり、不具合が生じて再手術したりすることがある。

人工関節ナビゲーションシステムで手術後脱臼が大幅に減少

人工股関節手術後の脱臼が大幅に減少した病院開発されたナビゲーションシステムは、あらかじめ手術する関節部分をMRIで画像データをとっておき、それを元に3次元のCG画像を作って綿密な手術の計画を立てる。
手術の際は赤外線照射で人工関節の位置や角度を測り、そのデータをCG画像に重ねて表示する為、計画通りの正確さで手術できる。

このシステムをいち早く導入している「りんくう総合医療センター」(大阪府泉佐野市)の人工関節センター長薮野先生は「角度で1度、位置で1ミリの誤差も出ないので経験が少ない医師でも確実に手術が行えます」と話す。
ただ、装置は高価で、システムに慣れるまで時間がかかるため、導入している病院は数%とまだ少ない。
同センターでは平成24年に導入し、今年3月までに人工関節などの手術を130件(再手術は除く)行った。
合併症が出たのは脱臼のわずか1件だった。(0.77%)

通常再脱臼頻度は3%ぐらいらしい

※人工股関節置換術後の脱臼発生頻度
おおむね 3%(0.8~9%)。初回 THA では 2~3%。再置換では 4~6%。
医療法人松田会東北股関節疾患センターの情報より。
公表していない病院はもっと高いかもしれない。

手術時間も短縮

68歳女性は、生まれつき股関節に軽い脱臼があり、加齢とともに左側の股関節が変形し、歩行が不自由になった。
家族の介護をしていることなどの事情から、人工関節の置き換え手術を受け、通常の動作ができる状態まで短時間で回復する必要があった。
女性はこのシステムを使った約1時間半の手術をうけ成功した。
翌日から歩行補助ロボットを使ったリハビリを行ったところ、歩行可能になったという。

手術後のリハビリにロボットを導入

このロボットは筋肉の動きに合わせて流れる電流を感知して作動し、硬くなった股関節の動きを助け、大きく脚が上げられるようにする。
りんくう総合医療センターでは全国で初めて歩行支援ロボットを使い、成果を上げている。
これまで25人に行った結果では3分間の歩行距離が手術前の平均140メートルから手術後一週間で160メートルまで改善した。

同センターでは今月から大阪大学などで開発された、
患者の膝関節のCGデータを基に3Dプリンターで手術のガイド器具を作製する手法も使っている。
この器具は個々の患者の骨にぴったりはまって切除する場所を示す切り込みが入っている為、格段に精度が高まり、手術期間も短縮できるという。

人工関節の置き換えは外科手術のため、不安に思う人が多い。
しかし、重症患者の社会復帰に向けて治療効果は大きくこれからも最新技術を取り入れ、安心、安全の手術を目指すという。