がん電話相談 産経新聞生活欄より
乳がん全摘、補助療法後の追加治療は?
悩み
57歳の女性です。左乳がんで全摘出術を受けました。
腫瘍は2.5×1.8×1.6センチで脂肪組織内に伸展、浸潤性乳管癌の硬癌でグレード3、脈管侵襲はなく、リンパ節転移が2個ありました。
ホルモン受容体はER,PgRともに陰性でHER2も陰性のトリプルネガティブです。
術後補助療法のFEC+ドセタキセルを4クール行い、治療は終了と言われました。
増殖マーカーKi-67が70%~80%と悪性度が高く、「さらに放射線治療を受けたい」と話しましたが
「リンパ節転移が2個なので放射線治療は行いません」と言われました。
回答
乳房切除後の放射線照射はリンパ節転移の数が目安になっています。
リンパ節転移が4個以上の人は放射線治療した方がいいといわれています。
1~3個の場合は国際的に議論が分かれ、国内では照射した方がいいという意見は
まだ多くありません。
抗がん剤は毒性が強く、それを行う場合、その毒性を上回るメリットがないと行えません。
放射線治療も同様で、がん治療には確かに有効ですが、
放射性肺炎や心臓に対する晩期の副作用などがあります。
皮膚には急性期の放射性皮膚炎がありますが、回復後も皮膚にダメージが残り、
硬く弾力性のない状態となります。
後で再建をしようとしても皮膚が十分に伸展せず、人工物での再建が困難となります。
これらのデメリットを上回るメリットが確実であれば照射ということになります。
しかし現時点では議論はまだ最中で、今後は転移が1~3個の場合も胸壁にがんが残っていそうな症例を選び行うこととなりそうです。
できることはすべてしておきたいと言うお気持はわかりますが、治療の対かはメリットばかりではないのです。
産経新聞25/8/20のガン電話相談記事からです。
乳腺専門の病理医が答える、乳がんの病理Q&A集が参考になります
http://www.saitama-cc.jp/section/nyugan-byori.2012.01.06.pdf
リンパ節転移の数と再発率は関係のグラフなどもあります。
そこで観ると、やはり4個以上が予後不良のリスクが高いことがわかりました。